新卒で入社した大手の専門商社に勤めて10年になります。
ライフイベントとして結婚、出産を機に休職し、子供を保育園に預けられるようになってから時短勤務で復職しましたが、中間層の人材不足という背景と、ダイバーシティの一環として女性が働きやすい職場作りというテーマの中で、時短勤務ながら管理職となり、10名ほどの部下のマネジメントを託されることになりました。

時間のしわ寄せは、自分に降りかかる
保育園への送り迎えという日常行事がある私に課せられたミッションは、毎日10時出社、16時退社という時短スケジュールの中で組織をマネジメントし、目標売上を達成することでした。
通常の社員は朝9時に出社し、20時頃までは残業するのが常でしたので、単純に1日あたりでみると午前中に1時間、午後に4時間、合計で5時間前後も周囲より就労時間が短くなる形になりました。
会社としても全面的にバックアップする、という触れ込みで始まったこの女性進出プロジェクトだったのですが、5時間短くなったとはいえ、当然のように目標数字は一切変更がありません。
周囲のメンバーは私よりも朝早くから、夜遅くまで仕事をしているわけですから、就労時間前後にもバラバラと相談の電話やメールが届きます。
皆、気を使って朝晩の連絡は控えるようにしてくれていましたが、それも本質的な解決策とはいえません。
社内会議で使う資料作りや、営業同行で出た課題解決のための打ち手づくりなど、やるべき仕事は時短になってもどんどん舞い込んできます。結果として、時短勤務で失った時間はどこにもリプレイスできず、結局自宅に持ち帰り、家事・育児を終えた深夜にパソコンに向かって作業する日々を過ごすことになりました。
表層の数字でしか語られない
ダイバーシティの取り組みとして、私のようなママさんワーカーが深夜に自宅で残業している姿など、会社側としては間違っても外に知られるようなことは避けたいわけです。
タイムカードを切って退勤したことにしてこっそりサービス残業をしたり、自宅に持ち帰って仕事を続けるようなことは日常茶飯事でしたが、人事サイドからは徹底的に外部に情報が漏れないようにと注意喚起され、報告として上がってくる数字は必ずルール内に収まることを要求されました。
会社への勤務状況や労働環境のチェックについては、単なるレポート数字の増減でしか判断されることはありません。
表層の数字をある意味適当にでも報告していれば、何も問題なくうまくいっている、という判断をされることになり、こんなに薄っぺらい施策にしかできていないけれど、大丈夫かな?と心配にはなりました。
正直、実態とは全然異なる報告をすることになったのですが、それでも周囲からは「家庭との両立で素晴らしい」というムードで声をかけてもらい、今更無理だとも言い出せなくなってしまいました。
本音で働きたい、という欲求が
1年ほど、主婦管理職として新しい働き方を模索するというポジションを経験させて頂いたのですが、最後の最後まで時短勤務によるしわ寄せについては会社側は何のフォローもしてくれることなどなく、全て自己責任というつらい状況が続きました。時間外でも預かってくれるサービスのある認可外保育園に移り、朝早めに出社する日や、夫に子供達を任せて思い切り遅くまで残業する日を作ったりすることで、日々の遅れを補填するという苦渋の選択をしましたが、子育てにかかるコストがどんどん増えていくと、何のためにこんなロールモデルを目指していたのか、がわからなくなってしまいました。
ワーキングマザーの理想像として社内表彰もされたのですが、とんでもない話です。実際には無理やり子育ての時間を削って仕事に割り当て、タイムカードも虚偽申告することでさも時短労働でパフォーマンスを上げているように見せかけていただけで、こんなウソばかりの毎日ではなく、本音で働ける環境の中で仕事をしたい、と思うようになりました。
上場企業だったため、体裁にはこだわる体質だったので、そこが息苦しくなってしまったのです。
こじんまり、でも伸び伸びと
結局、私は退職、そして転職というチョイスを行いました。
新たに選んだのは、前職とは比較にならないほど小さな零細企業。収入も2/3ほどに減少してしまいました。
でも、毎日すべて本音で仕事をすることができる環境に変わりました。
誰かが家庭の事情で早退する場合には、周囲のメンバーでフォローし合う。そのあたたかい空気感がとても居心地良く、主婦の私でも受け入れてもらうことができたこんな環境こそが、真のダイバーシティなのではないかと思うようになりました。現在は、毎日伸び伸びと、少数精鋭の職場で頑張って働くことができて幸せを感じています。
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