子供の頃からの夢であった保育士の仕事をするために、専門学校を卒業すると同時に自宅から自転車で通うことのできる保育園の面接を受け合格。晴れて保育士として働くことができたところまでは、私の人生は順調といえば順調でした。
ただ、世間でもよく問題視されているように、この職業のつらいところはお給料がとても安いことでした。このままでは貯金もできないし、いつまでも自宅から外に出ることさえできない。悩みに悩み、5年後に転職することを決意したのです。

得意なのは「子供と触れあうこと」?
転職活動を開始するにあたって、いくつかのエージェント会社に登録し、キャリアアドバイザーの方と面談を行いました。
新卒での就職とは異なり、転職での面接では「あなたは何ができますか?」ということを問われることになる、と聞いて愕然としました。
私が就職してからずっと仕事で学んできたのは、園児達とどう触れあうのか、ということでした。子供たちが学芸会で使う道具を作ったり、お歌の時間で演奏する曲をピアノで弾く練習をしたり、園児とのコミュニケーション以外でも色々な仕事はありましたが、面接で伝えられるPRとしてはせいぜい「子供と触れあうことが得意です」という事くらい。
とても、他のビジネスで転用できるようなスキルや経験はありませんでした。
まったく未経験の素人として、新卒のような形での就職活動しかできない、という事実を理解した時には、目の前が真っ暗になりました。
まるで自分の5年間を否定されたような気持ちにもなってしまいました。
パソコンは無理、営業や接客も経験なし・・・
同じ業界で別の園に転職したい、というなら話は別ですが、そうではなくもっと稼ぐことのできる異業種への転職を考えていた私としては、どこを選んでも知らないことだらけでした。
パソコンなんて自宅で父が使っているものを時々借りて調べものをしたり、学校の課題であったレポートを提出した程度で、ほとんど使うことはできませんでした。事務系が無理ならば、未経験でも応募できる案件といえば、多くの場合は接客や営業といった、外向けの職種しか募集が出ていませんでした。
かといって、営業はおろか、接客や販売といった仕事も、アルバイトでさえもやったことがなく、どちらかというと人見知りをしてしまう自分の性格からするとどちらも無理なように感じてしまいました。
エントリーする前から尻込みしてしまって、なかなか応募先を決めることができずに苦しむことになりました。
結局は「人と人」
最終的には、恥ずかしながら自力で転職する自信を失ってしまっていた頃に、叔父から声をかけてもらってとあるアパレル商社に拾ってもらうことになりました。伯父が営業部長として活躍しているその会社では、伯父の部下としてルートセールスに取り組むことになったのですが、それは青天の霹靂ともいえる毎日でした。
基本的に毎日営業車に商品を積み込んで、得意先を回るのが日々のルーティーンワークだったのですが、もともとファッションには興味があったので商品を覚えるのは好きな作業でした。
また、毎回同じお取引先の方々と顔を合わせて挨拶、納品する時間はとても楽しく、ある担当者の方に「保育士からの転職はとても怖かった」と正直にお伝えしたところ、「どんな仕事でも、結局は人と人とが関わって行うもの。保育園でも父兄や他の先生方とコミュニケーションを取ることがあったでしょう?」とアドバイスを頂きました。
確かに、人見知りではありましたが、多くの人や園児と関わることで、対人折衝力は知らないうちに磨かれていたのかもしれません。
むしろ、ワガママばかり言って泣き叫ぶ子供たちの相手をしてきたことを思えば、大人相手の会話はなんとスムーズで楽なことか(笑)、とても楽しく感じられました。
臨機応変な対応力!
もちろん、仕事を続けていく中では様々なトラブルにも見舞われることがあります。納品する商品が届かないとか、不良品が紛れているとか、注文したはずのカラーが含まれていない、とか・・・。しかし、ここでも保育士時代の経験が活きたのです。
それは「臨機応変に対応する」という経験でした。
園では、子供たちは大人の思い通りに行動してくれません。
大事な発表会の直前に熱を出して休んでしまう子がいたり、どうしてもこの役はイヤだと駄々をこねて泣き出してしまったり。マニュアルにない、想定にない問題は毎日次々と発生していたので、自然と「仕事とは、思い通りに進まないものだ」という心構えができるようになっていたのです。
子供たちのとんでもなく突拍子もない行動や感情の変化に振り回されてきた5年間は、決して無駄ではなかったのです。
職場では、「肝っ玉が座った新人」として話題になり、伯父からも褒めてもらえることが多くなりました。大抵のことはなんとかなる。そう思って、毎日楽しく仕事に取り組んでいます。
肝心の年収も大幅に増えて、勇気を振り絞って転職してよかったな、と今になって思えるようになりました。
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