家の近所にあるスーパーでパートの仕事を始めたのは今から20年前。最初は、時間の融通が効くという事と、もともと客として通っていた店舗なので勝手がわかるから、という安直な理由だけで選んだ勤務先でした。
まさか20年も続くことになるとは思ってもみなかったですし、ましてやその後正社員になり、役員になるだなんて、想像することさえありませんでした・・・。

「女のくせに」平気で飛び交う差別発言
この業界は体質が古く、それこそ20年前はまあ酷い職場でした(笑)。
業務改善に繋がるようなアイディアを思いつき店長に進言しようものなら
「パートの分際で」
「女のくせに生意気な」
などと怒鳴られ、「お前たちパートは黙って指示通り働けばいいんだ」ということを平然と口にする上司が存在する、今でいうと完全なブラック職場でした。
辞めずに頑張ることができたのは、もちろん生活のためという大前提こそあったものの、毎日のように顔を合わせるお客様・・・中にはママ友さんで長い付き合いのお友達もいましたが、そういったお客様とのコミュニケーションが楽しく、こんな私でも世の中の役に立つんだという実感ができることがとても嬉しかったためです。
パワハラ店長のなじり言葉も、不思議なもので浴び続けると雑音のようになっていき、次第に気にならなくなっていました。そういう意味では、まあここで鍛えられましたね(笑)。
仕事の報酬は、仕事
しばらくはパートとして働いていましたので、別に何かいい仕事をしたからといって時給が上がるわけでも、正社員のように役職がつくわけでもありませんでした。
ただ、できることが増えていくにつれて、「今度から、これも任せていい?」と、仕事で任せて頂ける領域がどんどん増えていったのです。時給も変わらないのに仕事が増えるなんて・・・と不審に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、当時の私にとっては、お客様のためにもっとこうしたい、こんなお手伝いをしたい、という想いが実現できるようになることが何よりもやりがいだと感じ、毎日ウキウキしながら働いていました。
“仕事の報酬は仕事”という格言がまさに当てはまるような働き方をしていましたね。そのうち、働きぶりやお客様の評価が経営陣にまで届いたのでしょうか、正社員として契約したいとのお申し出を頂くことができました。
私にとっては、社員だろうとパートだろうとやることに違いを感じることなどありません。お客様に笑顔で向き合う、それだ毛を意識してはいましたが、まあ待遇が良くなることはありがたいですから、正社員登用してくださったことには感謝し、ますます仕事に打ち込むようになっていきました。
気がつけば重鎮に・・・
2人の子供も成人して家を出ていき、いよいよ仕事に注力できるようになっていった私は、とうとう役員に昇格して頂くことができました。これまでは目の前のお客様のためだけに、あるいは同じ店舗で働く仲間たちのためだけに頑張っていればよかったのですが、経営陣に組み入れて頂いたからには、視座を上げていかなくてはなりません。
県内に7店舗あるこの企業をもっと成長させるためには何が課題でどんな打ち手を打っていくべきなのか、すべての店舗をぐるぐる回りながら考える日々が始まりました。馴染みのお客様と会話できない日も増えていき、ストレスはどんどん蓄積されていきました。なんで私はこんなつらい想いをしているんだろう?そんな悩みで眠れない日も増えましたが、「せっかくのチャンスだから」と主人も応援してくれて、なんとか持ち堪えることができました。
パートから役員にまで上り詰めたという、わかりやすいサクセスストーリーがよほど面白かったのか、何度かテレビや雑誌で取材を受ける機会もありました。なぜここまで頑張ってこれたのですか?そんな質問を受けるたびに、私は自分が歩んできた20年間という日々を思い出していたのです。
“お客様のために”想いは変わらず
20年間を振り返ってみて、ふつふつと湧き上がったのは、結局はお客様の笑顔を見たい、お客様のお役に立って感謝されたい、そんな気持ちだけはずっと持ち続けていたなあ、ということでした。
スーパーマーケット、という職場では、自分が勝手に売る商品を決めることなんてできませんし、お客様が欲しがっている商品をご提供できないことだってたくさんあります。自分にできることなんて、たかがしれている。そう思った時期もありました。でも、お客様がレジで毎日声をかけてくださったり、ご家庭でこんな食事メニューを作ってご家族に喜んでもらえたというお話を聞かせて頂くことが、本当に毎日の楽しみになっていました。
お客様のお役に立つ、それはひいては自分自身の大きな生きがい、喜びになっていたのだと実感しました。
「お客様第一主義」を掲げる企業は星の数ほどありますが、それでは果たしてその中の何社が、心の底からお客様のためを思って事業を続けているでしょうか。自分たちにとって都合の良い道を選択する、自分たちの利益が第一だという考え方になってしまってはいないか、常に自問自答を続けるべきだと思いました。
もちろん会社経営にとってお金の話は大切です。ですが、顧客からの信頼を勝ち取ることがきちんとできていれば、お金は後から自然とついてくるはずです。私が役員の仲間に加えてもらったのは、こんなメッセージを発信し続けるためなのではないか。最近は、そう考えるようにしています。