不安定な社会情勢が続く中で転職活動を行なっている方にとっては「次の職場こそ、定年まで続けられるようなところを選びたい」と考える心情はよく理解できます。転職するというのはなんだかんだ言っても莫大なエネルギーを使う行動ですから、そう何度もやりたいわけではないですよね。
しかし、これからの時代では「定年までひとところで働く」ことには大きなリスクが伴うため、その事をきちんと理解して転職活動にチャレンジすべきだと考えています。

終身雇用制度は崩壊
経団連会長が「既存の終身雇用制度は、今後継続してくことは不可能だ」と明言したことが話題となりました。
各企業が1つの事業を永続できる保証がない以上、これまでのような新卒一括採用、そして終身雇用制度を守り抜くことができなくなりますよ、と表明したのはごく当然のことで、これまでの経緯からすると寧ろ発表が遅すぎた位です。今後は、欧米で主流となっているように「ジョブ型雇用」が世の中の雇用基準となっていくはずです。人を採用して、その人の能力に見合ったポジションをあてがうという発想ではなく、職務ありきでそのタスクを全うできる人材を採用し、アサインする。仮にそのタスクを完結し、同様に力を発揮できるプロジェクトが他にないとすれば、さっさと別の企業に移りまた仕事を探す。
こんなジョブホッパーがもっとポジティブに、能動的に増えていくことが今後の世の中ではスタンダードとなっていくはずです。名刺を何枚も持ち、複数のプロジェクトを掛け持ちするような働き方も増えていくでしょう。
自分で選択できる時代
結婚する、子供ができる、親の介護が必要になる、自分にとって新しい夢や目標ができる・・・。人生、長く生きていれば色々なライフイベントが発生します。その度に私たち人間は物の考え方や捉え方、価値観は大きく変化していきます。そんな変化に合わせて、自分自身でフィットする働き方を選ぶことができるようにするためには、一つの企業にしがみついているようでは実現できません。
せっかく結婚して家庭ができて、子供が生まれて一番かわいい時期に単身赴任でほとんど成長を目の当たりにすることができないお父さん・・・こんなサラリーマン像は、もはや過去の遺産となっていくのです。家族と一緒に過ごすために地元へ戻り転職する、起業する。子育てや介護にこれまで以上の収入が必要となったため、残業が多くなってでも別の仕事に就く。家のローンも払い終え、余生をゆっくり過ごしたいので、収入は減るが労働時間の少ない仕事へ転職する。それぞれのニーズに合わせた仕事を選ぶことができる時代になっていくわけです。
この流れは、少子高齢化で貴重な若手労働力が減少していく中では、間違いなく加速するでしょう。子育て中の主婦であれ、引退を迎えたシニア層であれ、多種多様な形で社会貢献を続けることは、日本社会にとって必ず貴重な戦力となるのですから。
動きたい時に動けるか?
さて、そこで大切になってくるのは、自分自身が何か他の仕事を・・・と考えた時、動きたいと思った時に動くことができる能力を持っているかどうか、という事。30代には30代の、40代には40代の、重ねてきた年月相応のスキルや経験を求められることになるからです。どんなジャンルであれ、まったくの未経験であれば転職することは困難です。
同じ未経験なら、より人件費が安くて済み、より将来のある若者が優遇されることになるためです。特定の技能であれば、そのジャンルでの転職先を探すことが可能になりますし、例えば営業職のように特定の資格を必要とするものではない職務を続けてきた場合は、対人折衝力やスケジュール調整力、自己管理能力などどこへ行っても必要とされるような「ポータブルスキル」のレベルアップが必要となります。
いざ転職、となった際に、どれだけ他社の面接官から「あなたに来てほしい」と思わせるだけの能力や経験値があるのか。そこは、古今東西いつの時代でも転職時には必ず必要になるのです。行政主導での職業訓練など、スキルアップを実現するための選択肢は色々あります。常に自己研鑽を進めることをどれだけ日々意識できるのか、ということが重要です。
それでも定年は尊いもの
それでも、一つの仕事を突き詰める、一つの企業で定年を迎えるまで働き通すという行為自体の価値が損なわれるものではありません。一つの物事を長く継続する力は、誰もが持っているわけではありません。やはり「継続は力」なのです。
自分が入社した企業の風土や雰囲気を好きになり、与えられた仕事にもプライドを持ってやりがいを感じて続けられているのであれば、わざわざ転職へ舵を切る必要などありません。
終身雇用制度の終焉、とは、必ずしも定年まで働くことができなくなったという話ではなく、様々なチョイスができるようになった、という事なのです。その選択肢の中には、当然「今の仕事を定年まで全うする」という道も残されているはずです。
思考を止めて、惰性で定年まで居残り続けるという生き方は推奨できませんが、自らの意思で残ることを選び、定年を迎えるその日まで仕事に誇りを持って継続する。そんな生き方ができれば、これほど素晴らしい人生はないと思います。たくさんの選択肢を持つことができるようにするためにも、日々の努力が欠かせないという事です。しっかり考えて、来る「人生100年時代」に備えましょう。