結婚を機に退職した広告代理店に、時短勤務制度を利用して出戻り復職した28歳の私が、家庭と両立しながら仕事への情熱とやりがいを取り戻していく姿を描いた体験記です。迷いや葛藤を乗り越え、理解ある職場環境と自分の意識の変化を通じて、再び「社会との接点」と「自己実現」の喜びを実感するまでのプロセスを率直な感情のままに表現させて頂きます。

再出発の決意と準備期間の迷い
28歳。結婚して1年が過ぎ、専業主婦としての生活にも少しずつ慣れてきた頃、ふと感じたのは「このままでいいのかな?」という漠然とした不安だった。もともと私は大学卒業後に大手広告代理店に入社し、コピーライター兼プランナーとして働いていた。朝から深夜まで続くプレゼン準備や、クライアントからの細かな修正依頼。毎日が刺激に満ちていて、しんどい反面、ものすごく充実していた。結婚後も「仕事は続けたい」と考えていたが、夫の転勤により、やむなく退職を選んだのだった。
しかし、転勤先での生活が落ち着いてきた矢先、夫の在宅勤務が中心になり、私の生活にも時間的な余裕ができた。そのタイミングで、かつての上司から「復職支援制度が整ってきた」と連絡があったのだ。時短勤務やテレワークも柔軟に導入されており、家庭と両立しながら働くスタッフも増えているという。
当初は「一度辞めた会社に戻るなんて」と躊躇もしたが、よく考えれば、あれほど夢中になれた仕事は他にない。戻るのなら今しかないと思い直し、復職の意志を伝えるメールを送信したのだった。履歴書やポートフォリオの再整理、最新トレンドのキャッチアップ、業界ニュースを読み漁る日々が再び始まった。
復帰初日の緊張と新しいチームとの距離感
いよいよ迎えた復職初日。懐かしいオフィスの空気。コピー機の音、電話のベル、スタッフの談笑――すべてが記憶の中の「戦場」に一気に蘇る。だが同時に、以前の同期や上司の姿はなく、新しい顔ぶれに囲まれてのスタートは、思った以上に緊張感があった。
私は週4日、10時から16時までの時短勤務を選択。これまでのような深夜作業や、突発的なトラブル対応はできない。その分、限られた時間で「何ができるか」を常に逆算して動く必要があった。最初に任された仕事は、ある中小企業のSNSプロモーションプランの立案。チームのリーダーは5歳年下の女性で、彼女の方がプロジェクト経験も多く、正直「出戻りの私が足を引っ張るのでは」と不安も感じた。
しかし彼女は「〇〇さんの文章、柔らかくて説得力がありますね」と私の提案したキャッチコピーに目を留めてくれた。その一言で、「ああ、私、まだここにいてもいいのかもしれない」と感じた瞬間だった。時短という制約を負う代わりに、時間内で成果を出すスタンスが求められ、逆に「集中力」と「本質を見抜く力」が鍛えられていくのを実感した。
新しいやりがいとの出会いと自分の武器の再認識
働き方が変わると、見える景色も変わる。以前は、大型クライアントのブランディングやTVCMの制作が花形だった。しかし今は、SNSやWeb施策が中心となり、スピード感とターゲット理解が勝負の世界。私は自分の生活感や主婦目線を活かして、「リアルに届く言葉」の提案を行うようになった。子育て経験はないが、ママ層の購買行動をリサーチし、共感を得るコピーを作ることに特化する中で、「自分なりの強み」がまたひとつ浮かび上がってきた。
クライアントとのミーティングで「それ、私も思ってました!」と笑顔をもらったとき、画面越しでも心が震えた。小さな案件でも、自分のアイデアが世の中に影響を与える実感。それはかつての「忙しすぎて見えなかった達成感」とは、また別の形で、私を満たしてくれた。
「もっと働きたい」と思う反面、「今のバランスが一番心地いい」と感じることもある。かつてのように100%の時間とエネルギーを投じなくても、「100%の想い」を注げる。今の働き方は、そう気づかせてくれた。
家庭と仕事の間にある穏やかな「幸せのかたち」
仕事を終えて帰宅すると、夫が笑顔で迎えてくれる。夕飯を一緒に食べ、映画を見て、ゆっくり眠る。以前のような「終電帰り」「週末も資料作り」という生活からは一変し、「日常にある豊かさ」を感じられる毎日だ。時短勤務だからこそ、効率的に働く力が身につき、仕事以外の時間も充実させる意識が高まった。
会社では、時短制度を利用する社員のためのコミュニティもあり、困ったときに相談できる体制が整っている。キャリアを止めたくない、でも家族も大切にしたい――そんな私のわがままを、受け入れてくれる風土がある。
いま、私は確信している。「ライフステージが変わっても、自分らしく働ける場所はある」と。再出発を怖がらず、一歩を踏み出してよかった。そして、私と同じように迷っている誰かに伝えたい。「諦める理由より、やってみる価値を信じて」と。
広告の世界で、私はこれからも“今の私”にしか出せない言葉を、世の中に届けていきたい。
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