子供の頃から車が大好きで、ラジコンを自分で組み立てたり、また分解したりしてよく遊んでいました。その趣味の延長で、興味を持っていた自動車整備工になることができた時には嬉しくて毎日仕事が楽しみで仕方ありませんでした。
でも、理想と現実は違うもの。毎日同じような流れ作業が続くうちに、あれだけ好きだった車いじりがだんだん嫌だと感じるようになってしまったのです。

時間に追われ、「適当に」仕上げる
一台の車を分解して構造を知り、最高の状態に仕上げることが自分にとって最大の喜びでしたが、実際の仕事ではそんな感情などおかまいなく、ひっきりなしに修理の依頼が届きます。
決められた納期までに、目立つ故障箇所を修理すること「だけ」が求められ、お客様に完全な状態に戻してお返しできないというジレンマがずっと付き纏うことになりました。もちろん、法定点検をクリアしているわけですから、走行に問題があるわけではありませんし、お客様のオーダーにはきちんとお答えしていました。
それでも、この車の性能はこんなものじゃない、もっと使いこなせていない機能があると知っている自分からすると、それぞれの車を見ると不憫な気持ちにもなってしまいました。
特定の車種しか扱えない
またこれは入社前からわかっていたことですが、某国内大手自動車メーカーの下請け工場での仕事でしたので、そのメーカーの車しか扱えず、しかも高級車は別ブランドでの取り扱いであったため、日々持ち込まれるのは大量生産されている汎用車ばかり。
作業も単純で、楽といえば楽でしたが、見たこともない部品や構造に出会う機会など皆無で、毎日ずっと同じような単純作業の繰り返しだと気づいた時には、この仕事に対するモチベーションはどんどん低下してしまったのです。
会社の都合で使用できる部品にも色々と制約があり、自分の思うようなカスタマイズ、メンテナンスができないことに苛立つことも多くなりました。結局2年間勤めた後に、転職しようと決意することになったのです。
フルカスタマイズの世界に
転職した先は、F1好きの社長が経営する、輸入販売の個人商店のようなところでした。前職と比較するとかなり規模も小さく、当初妻はこの転職には不安を感じ反対されましたが、自分の仕事に対するモチベーションをもう一度しっかり高めたいと感じ、ワガママを言って転職させてもらいました。
購入されるお客様は社長と個人的な繋がりがあったり、鈴鹿サーキットで出会ったレーサー仲間ばかり。世界に数台しかないレアな外車の注文が入ったり、関わっているだけでもワクワクするような仕事ばかりでした。
修理、カスタマイズもそう簡単には手に入らない部品がほとんどで、あちこち調べて仕入れたり、既製品を加工してうまく活用したり。自分の技術が初めてお客様のために役立つと実感できて、本当に仕事が楽しく感じられるようになりました。
安定には程遠い。しかし充実感が。
実際に、この転職した会社は吹けば飛んでしまうような零細企業です。景気の波にも左右されるでしょうし、一部の上顧客とのパイプが途絶えてしまえば、販売先は一気に縮小してしまうようなリスクもあります。ですが、車を触ることがこんなにも楽しかったのだ、という感情は久しぶりに持つことができました。少年時代、ラジコンを改造してワクワクしていたあの頃の気持ちを取り戻すことができたのです。
ボーナスもなく、残業だらけの日々で妻からはブツブツ言われることもありますが、それでも私が仕事に対してポジティブに取り組めるようになったことを喜んでくれています。
ゆくゆくは、社長からたくさんのノウハウを学ばせて頂き、自分で輸入代理店を立ち上げたいと思うようにもなりました。単なる自動車整備だけではなく、仕入れから販売、メンテナンスまでを一手に引き受けるトータルプロデューサーとして、世の中のお役に立てるような仕事を続けていきたいと思っています。
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