学生時代からカフェや花屋などで、ずっと接客のアルバイトを続けてきた私は、卒業してからもフリーターとして居酒屋でホールの仕事をしていました。陽気なスタッフや親切な店長さんによくしてもらって、気がつけばリーダーポジションに。店長さんから誘われていたこともあって、なんとなくこのまま社員にしてもらおうかな、と考えていたところで、ある出会いがありました。

常連のお客さんが、実は・・・
といっても、面識のない人と出会ったわけではありません。ずっと前から、常連でお店によく来られていた方が、実は従業員500名の大きな会社の経営者だったのです。
彼が、私のスタッフとしての働き方、接客の仕方をよく見てくださっていたそうで、ある日突然「君は、これから先の人生はどうしたいと思っているの?」と訊かれました。「もしよかったら、一緒に働かないか」とも。
ちょうど、漠然とこのままでいいのかな、と考えていた私はドキッとしてしまい、うまく答えられませんでした。
その時、社長さんから「まだ若いんだから、ちゃんと自分の夢を持って、将来はこうなりたい、と即答できるようにしなくちゃもったいないよ」と言われた言葉が、胸に残りました。
過大評価とのギャップに苦しみ、悩む
その日以降、社長さんは数回にわたってお店に顔を出してくださり、私にこう話しかけてくださりました。
「ずっとこの(飲食の)業界でやっていきたいと思っているなら、あなたは成功できる人だと思うので、ずっと応援したい。ただ、次は違う道を選びたいと考えているなら、うちのことも真剣に考えてみてほしい」と。
お話を伺ってみるとそこは老舗の鉄鋼商社。
商品のことも、業界のことも何も知りません。
ただ、社長さん曰く、私のようにハキハキと受け答えする若手人材が、社内の停滞ムードを変えるためには必要だとのことでした。
まったく未経験ですが、事務の仕事にチャレンジしてみないか、と何度も勧誘してくださる社長さんのお話に、次第に惹き込まれていきました。
決して今の仕事が嫌だったわけではないのですが、立ち仕事が続き腰痛が悪化していたことも、将来への不安として感じていましたので、思い切ってお誘いを受けることにしたのです。
まったくの異業種・異職種。苦戦の連続
入社直後から、メンターとして先輩社員の方がつきっきりで指導してくださりました。いくら社長が「ムードメーカー」として期待していると勧誘してくださったからといって、仕事は仕事です。パソコンは自宅にもあり、ExcelやWordの簡単な入力作業はこれまでにも経験したことがあったものの、事務という仕事の内容は本当に多岐にわたり、わからないことの連続でした。何がわからないのかもわかっていない、そんな苦戦の連続でした。
”やっぱり、私はあのままお店に残ったほうが良かったのではないか”
そんな感情が芽生えたのも、1度や2度ではありません。
ただ、先輩や同僚の皆さんが落ち込む度に励まし、支えてくださったのです。
人の期待を裏切りたくない。その一心で
そもそも、誘ってくださった社長さんの期待を裏切ることだけはしたくない。その一心で、わからないことや一度失敗してしまったことをメモし、次からの仕事に活かすようにしていきました。
1年が経った頃、気づけば一通りの仕事をこなすことができるようになっていました。
久しぶりに社長さんに呼ばれ、前職の居酒屋に二人で訪れました。
その時に、どうしても私が聞きたかったことを質問してみました。
「どうして、まったく未経験だった私を誘ってくださったのですか?」と。
社長さんは、少し微笑みながら、
「君は、負けず嫌いで、そして何より”人のために”という気持ちが強い。それは、このお店にいた頃から感じていた。だから、僕が誘って入社してくれたなら、期待を裏切らないようにと頑張ってくれると思っていたんだよ。」と話してくださったのです。
私の性格を、正しく理解し評価してくださっていたのだなあ、と感じました。
人生、一期一会。
もちろん、居酒屋で仕事をしていた頃は、そんなことを意識していたわけではありませんでした。ただ、お店に来てくださったお客さんに楽しんで頂けるように、「また来るよ」と言って頂けるようにと思ってばかりでしたが、その気持ちは職場が変わっても大切にしていくべきなのだと実感しました。
人生、どこでどんな出会いがあるかわかりませんね。
”一期一会”という言葉、素敵ですよね。
これからも、一人一人との小さな出会いを大切に、頑張っていきたいと思います。
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