高校を卒業してから地元のメーカーに就職し、ずっと工場で勤務してきました。工業製品を作っている会社でしたが、ベルトコンベアに乗って流れてくる製品に輸送用の保護シールを貼る、という単調労働。油の匂いが漂う古臭い工場で、汚れた作業着を着て働く仕事に対して、確かにいい印象を持つ方は少ないかもしれません。実際に親からは、自分の性格からして長続きしないのではないかと心配されていました。

毎日、同じことの繰り返し。
確かに、入社して仕事を教わり1ヶ月もすると、仕事の手順は完璧に覚え、毎日同じ作業をひたすら繰り返すことになりました。
当初は、新しいことを覚えなくてもいいという安心感があったのですが、ずっと同じ作業を続けていると、とにかく時間が経つのが遅く感じられて、朝9時始業なのですがまだ10時にもなっていないのか、と驚くことが何度もありました。唯一の楽しみといえばお昼休みですが、それも自宅から持ってきた弁当を静かに食べるだけ。周囲の仕事仲間とは時間差でラインを止めないようにシフト管理されていたため、誰かと一緒にランチをするということもありませんでした。
1年も経つと、このままずっと続けていいのかなあ、と、かすかに不安を覚えたこともありました。
業績不振、突然のリストラ・・・
それでも自宅から近いこと、少ないながら安定してお給料をもらえることから、不満も言わずに仕事を続けていましたが、4年目の春に、全従業員が集められて社長から緊急会議があり、その場で業績不振による人員削減の話を聞かされました。リストラです。高卒で単純労働をしていた私などは真っ先にリストラ対象となり、あっさりとひと月後での退職を勧告されてしまいました。
やむを得ず、はじめて転職活動をすることになったのですが、社会人経験が3年あるとはいえ、経験値としてはただシールを貼るだけ。これでは転職者としての価値などないのではないか。途方に暮れつつも、次の仕事をみつけるため、転職サイトや求人情報誌をはじめて見てみることにしました。そこには、華やかな仕事(の、ように見える)の求人がたくさん載っていました。心がワクワクするような仕事もありましたが、所詮高卒の自分には無理だと諦め、現実路線で考えることにしました。
同じ工場での仕事を選ぶ。
“未経験歓迎”と謳われた仕事もたくさんあったのですが、悩んだ結果として私が選んだのは、またしても工場でのライン作業でした。
自宅から2駅という近距離に職場があったことと、面接の際にこれまでの経験を活かすことができると面接官の方から勧められたのが決め手となりました。
今度はアパレル商社だったのですが、納入されてきた商品の検品作業が主な仕事で、毎日大量の衣服に囲まれて、商品のチェックをする日々が始まりました。
同じような工場での勤務といっても、業界が異なるとやることがこんなにも違うんだという発見があり、それなりに刺激のある日々を送ることができるようになりました。
何より、これまであまり興味のなかったファッションについても自然と詳しくなっていき、友人からも買い物に出かけるとアドバイスを求められるようになったり、楽しみも増えました。そして、そこでは前の職場とは違う、やりがいに感じられる出来事がいくつかありました。
単純作業でも、意味がある。
それは、同じ工場の中で働く色々な方とのコミュニケーションがとても多かったことです。
商品企画やバイヤーの方、また取引先に納品している営業の方などと、しょっちゅう会話をする機会がありました。
「あなたがしっかり検品してくれたおかげで、先方にも喜んでもらえたよ」という報告を頂いたときには、単純作業であっても自分がしている仕事の意味、意義を感じとることができましたし、前とは違ってお昼休みはパートさんも含めて皆さんが一緒に食堂に集まるため、他の部署の方々とも仲良くなることができました。
月末になると仕事後に一緒に打ち上げで飲み会をしたり、一人一人の仕事仲間の顔と表情がよく見えるようになり、自分としても働いている職場のことをどんどん好きになっていきました。仕事は、何をするのかが大事なのではなく、誰とするかがやりがいに関係するのだな、と、身をもって実感しました。
今の仕事は気に入っているので、長く続けることができそうです。
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