高校生の頃からの夢だった美容師になり、仕事にもやりがいを感じて働き続けてきました。しかし、数年前に結婚し、子供ができると生活に必要なお金は年々増加。専業主婦になった妻もパートに出てくれることになったものの、それでも現状での収入のままでは先行きも見通すことができず、30歳にして転職活動することにしました。目的は年収アップ。しかし、事はそう簡単なものではありませんでした。

特殊スキルは他で活かせない?
美容師という職業を端的に表すならば、それはとても特殊な仕事である、ということに尽きます。他人の髪をカットし、シャンプーしたり、カラーリングしたり。そのスキルは経験を重ねるうちに向上していった自負はありますが、いざ転職するとなると当然、そのようなスキルを転用できるような仕事はまったく見つかりませんでした。唯一、同じ美容師という職をおいて他には。
別に職場での人間関係が悪かったわけでもなく、同業他社へのスライド転職をしたかったわけではありませんので、1から始める職種で、少しでもこれまでの経験値が活かせるような仕事を探してみました。しかしお目当ての求人は残念ながらなかなか発見できず、途方に暮れてしまいました。未経験でもOKという求人も多数ありましたが、それでは当初の目標である年収アップには程遠い条件のものが大多数だったのです。
コミュニケーション力が武器に
藁にもすがる思いでとあるエージェント会社に登録したのですが、そこでアドバイザーの方から言われた言葉が、私の転職活動を大きく前に進めてくれることになりました。美容師という職業は確かに特殊だが、お客様と会話したり、ニーズを聞き出したりするコミュニケーション力は、例えば営業という仕事であれば必ず使う場面があります、と。
さらに、営業職であれば固定給+インセンティブで報酬が増える求人があること、昇給・昇格によって年収アップが見込めることも教わり、俄然営業職に興味を持つようになったのです。
結果的に、未経験からでもチャレンジできるネットワーク回線のリース会社へ転職することができました。そこでは、私だけではなく元競輪選手やお笑い養成スクール卒業生など、多種多様な人材が集まってきて構成されたいたため、不安はかなり和らぎました。まったく未経験の状態から、営業の仕事に挑戦する日々がスタートしたのです。
営業現場へ放り込まれる
まず、スーツを着てネクタイを締めるということさえ、冠婚葬祭の時くらいしか着る機会がない状況でしたので、慣れるまではなかなか大変でした。パソコンもほとんどロクに使ったことがなかったのでタイピングを練習したり、オフィスで目の前の電話機が鳴って顧客対応するトレーニングも、何度もダメ出しされながら慣れていきました。
研修を終え、商品知識をインストールすると、とうとう先輩営業マンとの同行が始まりました。その先輩が担当する顧客のうち何割かを、引き継がせて頂いて自分で担当することになったのです。ご挨拶し、名刺交換も辿々しくなんとか無事に終えたものの、お客様からみるとこんな右も左もわかっていない新人が自社の担当について、「本当にこの営業マンで大丈夫なのか?」と不安に思われたことでしょう。
自分にできることは、少しでもそんなお客様の不安感、不信感を払拭するために、相談を受けた事についてはすぐに調べてお返事すること。頂いた宿題については必ず納期までに返答することを心がけました。次第にお客様とも打ち解けることができ、徐々にではありますが、営業という仕事の醍醐味を感じられるようになりました。
もがきながら成長を実感する毎日
転職して2年が経過しました。相変わらず慣れない事もまだまだ多いのですが、お客様から「君だから安心して注文できるよ」というお言葉を頂いた際には、心の底から転職して良かった、と感じるようになりました。美容師の仕事も本当に楽しく、別に嫌になって辞めたわけではなかったので、当初は後ろ髪を引かれるような気持ちになるんだろうなあ、とは覚悟していたのですが、いい意味で新しい刺激が毎日のようにあって、過去を懐かしんでいるような時間などなかなかありませんでした。
1年経つと後輩新人も入社してきて、先輩社員として今度は自分が指導したり、同行してお客様を引き継いだりする番にもなりました。目標であった年収面の向上も達成できましたし、何よりも毎日成長実感を持って仕事に取り組むことができていますので、最高の環境で働けているなあ、と今の職場には感謝しています。家族のためにも、今後は役職付のポジションまで出世し、より良い働き方を模索していきたいと考えています。
数年前の私のように、コンプレックスを感じながら転職活動に臨んでいる方も多いのではないかと思いますが、ぜひ自信を持ち、変化を楽しめるような転職を実現して頂きたいと思います。